不染世間法 如蓮華在水

寒さが厳しくなってきました。皆様いかがお過ごしでしょうか?院長の戸谷です。

私は医療人としても、また一人の人間としても、まだまだ人格の陶冶に励まなければいけない段階ではありますが、ある仏教の、この表題の言葉に惹かれます。

「世間の法に染まらざる事、蓮華の水に在るが如し」 これは、「蓮が泥沼の中にあっても美しい花を咲かせるように、人は汚れた世俗を生きていても、それに染まらず清廉な生き方を貫く事ができる」という意味です。

日本社会では不景気による波で、依然多くの方々が大変な思いをされています。企業の倒産も多く、仮に倒産しなくても経費の圧縮や、それに伴う仕事量が増えているのはどこも共通する事でしょう。ある企業が危機的状況になると、それに関連する下請けはもちろん、監査部門も影響が出てきます。医療も同じで、地方の公立病院が倒産しているのも珍しくありません。現在の健康保険システムは、世界的に見ても国民の満足度が高いシステムですが、制度的に無理があるため、先行きが極めて不透明です。

奇麗事だけで、物事が全て進むはずがありません。多くの方々が「おかしい」と思いつつ、「家族のため」「会社のため」に、泥水を飲まざるを得ない現実。そして正直者ほど、その不満や苦悩を居酒屋の酒で流し去っているのではないでしょうか。

どんな大変な現実を前にしても、希望を持ち続け、波風が過ぎ去るまで耐えましょう。そしてどんな仕事でも、本来あるべき姿を追求する理想を忘れない事が、何より重要だと思う。それが「不染世間法 如蓮華在水」に少しでも繋がるかと思うのです。

更に、表向きの綺麗なキャッチコピーに惑わされる事なく、その裏に隠れる真実を見抜く目。大変重要だと思います。一見簡単に見抜けそうな詐欺が、相変わらず多発しています。なかなか学校では教えてくれませんし、家庭教育でも難しいでしょう。信じる事の重要性と疑わねばならない事のバランス。でも、そんな眼力を養わねばならないなんて、ある意味悲しいですね。 医療も同じです。

家族のため、会社のために、自分の事を後回しにしたため、お口の状態が極めて悪化している方も珍しくはありません。早めの対処が、短期間の治療を可能にします。当院では、できるだけ歯を保存するようにしていますが、その技術をもってしても抜歯せざるを得ないほど悪化している事も珍らしくありません。ブリッジやインプラント、入れ歯で機能的に回復しますが、健全な自分の歯よりも優れている人工の歯なんて存在するはずがありません。そうなる前に、早めにどうぞ。症状が出た時は遅い事が多いですし、その事実を知らない方が大半です。